「切れるの別れるのッて、そんな事は、芸者の時に云うものよ。私にゃ死ねと云って下さい。蔦には枯れろ、とおっしゃいましな。」というセリフで有名な「婦系図」まさか、私が天下一の美女、お蔦を演じることとなるとは。
「婦系図」の中のお蔦は、太陽のように輝き、月のようにあたたかく、花のようにあでやか。そんなイイ女を演じることとなるなんて、とてもうれしいことです。
お蔦は、愛する早瀬主税の将来を思い、身をさすような思いで別れます。まさに、現代の観音さまのように、あたえる愛をつらぬくのです。そんな、けなげなお蔦の心が作品全体に描かれて人の心をうつのです。
相手役の早瀬主税には、前作同様、講談界のプリンス、旭堂南青さんがつとめてくださり、若いが味のある演技が作品をもりたてています。また、お源役の、芹沢文子さんの個性的な演技が観る方の笑いをさそいます。
そんな、一人一人の味が、人情が、「湯島の白梅」をあたたかい作品にそだてています。観る人の心に、人間は、すばらしい。と思っていただける作品です。
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