「古今亭の風」
文:小佐田定雄(落語作家)

▲『船徳』より


名人・古今亭志ん朝が、ここトリイホールにやって来るのは、毎年五月の薫風さわやかな季節のことでした。そして、五月の風よりも、もっともっとさわやかな風を高座から客席に送っておられました。
 その風が吹かなくなって七年のときが流れました。
 でも、ご安心ください。新しい「古今亭の風」はトリイホールにちゃんと戻ってきていたのです。その風の発生源は志ん橋さんと志ん輔さん。このお二人、お弟子さんだから・・・というだけでなく、とても志ん朝さんに似ています。
例えば、今回の表紙に登場している志ん輔さん。撮影現場に私も立ち合わせていただいたのですが、志ん輔さんは「リハーサルを兼ねて」とおっしゃって、本番で演じる『船徳』のワンシーンを披露してくださいました。その時、間近で拝見した指先の型や、ひょいと首をかしげた時の角度など、どこを取っても「志ん朝」なのには感心も得心もいたしました。と言っても、単なる物まねではありません。「物まね」の場合に感じられる、ホンモノに対する後ろめたさや、卑しさといったものが全く感じられない似方なのです。それは、志ん輔さんが、師匠のうわべだけを真似ているのではなく、もっと人間の奥にある「心」の部分から似ているからだと思うのです。
 志ん橋さんも同様です。声のトーンなどは師匠とは少し違っているのですが、噺のリズムやメロディラインなど、DNAでしか伝えられない部分までもが伝えられているのに驚きを感じます。
そして、お二人とも、「志ん朝」という豊かな土壌の上で、ご自分たち独自の花を咲かせているのです。その花がどんな花かは、皆さんご自身でお確かめください。
志ん橋さんは十月に二度と十二月に一度、志ん輔さんは十一月にトリイにやって来ます。
その時、トリイホールの高座には、確実に「古今亭の風」が吹きます。



この度、インフォメーションの文章を書いていただきました、小佐田定雄さんとは・・・

落語作家。
昭和52年に桂枝雀に新作落語「幽霊の辻」を書いたのを手始めに、新作や滅んでいた落語の復活などを手がける。
これまでに書いた新作は、『貧乏神』『茶漬えんま』『神だのみ』『狐芝居』『マキシム・ド・ゼンザイ』など200席近い。
 
「トリイDE志ん輔」

日時:2008年11月3日(月・祝)3時開演
出演:古今亭志ん輔・古今亭志ん八
料金:3000円
「第一回古今亭の会」

日時:2008年10月13日(月・祝)3時開演
出演:古今亭志ん橋・古今亭志ん丸・古今亭朝太
料金:前売2700円 当日3000円 ハリハリ鍋セット6500円
>>古今亭志ん輔ホームページ





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